自治体情報政策研究所住民基本台帳法の再改正

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 これまで政府は、住民基本台帳ネットワークによる本人確認情報(氏名、生年月日、性別、住所、新たに全国民にふられる11桁の住民票コード及びそれらの変更情報)を利用できる国の機関や事務は、法令上明確に規定された10省庁・93事務に限定されるとしてきました。
 しかし、政府は住民基本台帳改正法の施行(2002年8月5日)前に、早くもこれをパスポートの発給や不動産の登記、自動車の登録などの171事務を新たに加え、264に拡大しようとしています。
 政府は、2002年6月7日、今通常国会(第154回国会 2002年1月21日から6月19日まで)に、次の「電子政府の推進」関係の三法案を提出しました。

・ 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案(概要 PDF
・ 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(概要 PDF
・ 電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律案(概要 PDF

 この内の「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(以下、整備法案)に、住民基本台帳法の再改正が含まれています。
 「整備法案」は、その概要で「本法の施行に伴い、本法で包括的に規定する事項の例外事項、本法のみでは手当が完全でないもの等について法律の改正が必要なものの所要の規定整備を行う」と、基本法とも言うべき「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案」に関わる例外事項や補完事項を取扱うものと表現されています。
 が、住基ネットの利用拡大が「例外事項や補完事項」程度のものであるとは、到底思えません。また、住基法の改正時の附帯決議「(国の機関等による)システム利用の安易な拡大を図らないこと}にも明らかに反しています。
 小泉内閣は、個人情報保護法の制定が進んでいないもとでの、住民基本台帳法単独の再改正では、野党の反発を招くだけでなく、下手をすれば国民的な議論が、まき起きる(寝た子を起こす)恐れもあると判断し、できるだけ目立たないように、住基法の再改正を「整備法案」の中に潜り込ませたのでしょう。
 しかし、こうした政府の努力にもかかわらず、個人情報保護法に対する反対運動に加えて、防衛庁のリスト問題などを受けて、与党三党は、今国会での成立を断念し、次の臨時国会以降に審議を先送りせざるを得なくなりました。

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行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

 2002年6月7日に閣議決定された法律案が、総務省サイト内に、下記のとおり掲載されています。全てPDFです。
 住基法の再改正である「住民基本台帳法の一部改正」に関する条文は、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の第15条にあります。
 法律案・理由については17ページから、新旧対照表については(3)の29ページから、参照条文については17ページからが当該部分です。

住民基本台帳法の再改正に関する報道

 

住民基本台帳法に基づく本人確認情報の提供又は利用事務の追加素案

 総務省自治行政局による「住民基本台帳法に基づく本人確認情報の提供又は利用事務の追加素案」(未定稿)を入手しましたので、当ページにて公開します。この素案は、総務省自治行政局市町村課より各都道府県住民基本台帳ネットワークシステム担当部長(市町村課・地方課及び情報化推進担当課扱い)宛の文書「住民基本台帳法に基づく本人確認情報の提供又は利用事務の追加に係る地方公共団体の意見とそれに対する対応について」(事務連絡 平成14年2月20日)に別紙として付けられていたものです。
 入手した文書は、印刷物でしたので、公開するにあたりスキャナで読み取り画像ファイル(GIF形式)に変換し、Word形式ファイルに張りつけています。ファイルサイズが、たいへん大きくなっていますので、取扱いにご注意ください。

総務大臣:住民基本台帳ネットワークの拡大利用に問題なし


 片山総務大臣の言には、いくつかウソ(または、勘違い ?! )があります。

1.「所管の所から本人確認を求められたら教えるというだけの話。
 これまでの紙ベースであれば、住民Aさんの本人確認がしたいと公文書で○○省から××市に「求められたら」、××市役所の住民登録担当課が法律の条文に照らして妥当な請求か一々判断し、妥当ならば法律の範囲内で○○省に対して公文書で「教える」のです。××市は不当と判断する請求から住民Aさんの本人確認情報を自らの意思で守ることが可能です。当たり前ですが、××市は○○省から住民Aさんの本人確認の請求があり、○○省は住民Aさんの本人確認情報を取得したことを知り得るわけです。××市役所には、○○省からの依頼文書や、○○省への回答文書(控え)が保存されますが、これらの文書は、××市の情報公開条例・個人情報保護条例の対象となり得ます。住民Aさんは自分の情報がどこにいつ提供されたか知り得る術をもっていると言えます。
 しかし、住基ネットの場合、○○省から××市に、住民Aさんの本人確認がしたいとの連絡はありません。○○省は、指定情報処理機関である地方自治情報センターのコンピュータにあらかじめ保存されている住民Aさんの本人確認情報を、必要と判断した時に、○○省のコンピュータから電気通信回線を通じて取りにいくだけです。××市役所の住民登録担当課は、○○省が住民Aさんの本人確認情報を取得したことを知る由もありません。本人確認情報を○○省が取得した記録が、後々、××市役所に対して提供されるようにもなっていません。××市役所の住民登録担当課が法律の条文に照らして妥当な請求か否か判断することはできないのです。判断するのは、あくまでも○○省であり、××市としては住民Aさんの本人確認情報を守ることはできません。ここには「求められたら教える」という関係は成立し得ないのです。ですから、当然のこととして住民Aさんには、自分の情報がどこにいつ提供されたか知り得る術はありません。

2.「国が一元的に管理するのではありません。関係地方団体が共同で処理するということなのです。地方自治情報センターでしたか、共同処理センターなので、国がやるのではないのです。
 東京都杉並区の例を見れば、自治体の判断に基づく参加ではなく強制であることは、火を見るより明らかです。国に一元管理する意志がないのなら、なぜ、法律によって全ての自治体に住基ネットへの参加を強制するのでしょうか。「関係地方団体が共同で処理する」のなら、必要と感じる自治体だけがそれぞれの意思で参加すれば良いのではないでしょうか。また、なぜ、共同処理センター(指定情報処理機関)が、政府が指定した総務省の外郭団体である(財)地方自治情報センターだけなのでしょうか。自治体がコントロールできない一民間団体を共同処理センターにするのではなく、地方自治法に基づく地方自治体(特別地方公共団体)である一部事務組合や広域連合などを共同処理センターにした方が、よほど民主的であり、地方自治に適っていると言えるのではないでしょうか。総務省の外郭団体に全国民の個人情報を集約させる改正住基法を国民的議論もなく制定し、その施行前に早くも利用範囲を拡大しようとする政府の姿勢を見れば、「国が一元的に管理する」ものだと批難されるのも当然でしょう。

3.「(個人情報保護法案と行政機関の個人情報保護法案は、今国会で)通った方がいい。皆が安心しますから、全部通った方がいいと思います。」「(通らない状況でも8月の施行には、)今の法律の仕組みでも大丈夫ですから。念のためにああいうものがあった方がいい、確かに安心しますから
 改正住基法の附則には「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」の一項が、わざわざ付け加えられています。公明党は、この附則を付けることによって改正法案に賛成したのです。けっして「皆が安心しますから」のレベルではありません。これは、国民の気持ちの問題などではなく、もし施行までに通らなければ、政府は、この附則に反することになるがどう責任を取るのかの問題です。
 1999年6月10日に行なわれた地方行政委員会(第145回国会)において、小渕首相は「住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識に至った」との答弁を行なっています。片山総務大臣の発言は、この答弁にも明らかに反しています。
 だいたい、行政機関の個人情報保護法案は総務省が担当省庁であり、片山総務大臣はその最高責任者です。建前であっても「8月の施行までには通すよう頑張りたい」ぐらい言うべきでしょう。「個人情報の保護に万全を期す」必要があるのですから。総務大臣のこの他人事のように語る無責任性は、小泉首相をはじめとする小泉内閣閣僚に共通する持って生まれた性格のようです。こうした認識の方が担当大臣では「皆は安心しません」。

4.「ICカードを市町村に作ってもらいますが、これをどこの範囲でどうやるのか、それぞれ市町村に議論して決めてもらえばいいので、それを一元的にどうこうするなんて全く考えていません。
 では、なぜ、「e-Japan重点計画」(2001年3月29日、IT戦略本部)には「行政機関が発行するICカードに関して、・・・(略)・・・複数の情報を相乗りさせることについて検討する。このため、関係府省が連携して、制度面、技術面、コスト面、利便性や安全性等の面からその可能性を検討した上で、2001年度のできる限り早い時期に基本的スペックを策定する 」と書かれているのでしょうか。また、内閣府に設けられた「公的分野におけるICカードの普及に関する関係府省連絡会議」は、2001年7月27日に「国民等の利便性の向上、行政コストの削減を図るため、行政機関が発行するICカードに関して、・・・(略)・・・1枚化を図ることが可能となるような共通の仕様とする」、「仕様の策定が先行している住民基本台帳カードをベースとして連携ICカードの仕様を策定する」との申し合わせを行なっています。IT戦略本部に席を置く総務大臣という立場上、これらの動きを知らないはずがありません。国が住民基本台帳カードに盛り込む情報や機能を決めたあとで、「それぞれ市町村に議論して決めてもら」う余地は残されているのでしょうか。政府のこれまでのやり方、そしてこの間の動きを見ていれば、「一元的にどうこうする」と考えているとしか言いようがありません。

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