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住基ネット差し止め訴訟

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 住基ネットは、「個人情報」をいつ誰に知らせるかを本人自身が決めるという「自己情報コントロール権」(プライバシーの権利)を踏みにじるものであり憲法違反であるとして、全国各地で国や地方自治情報センターなどを相手に、住基ネットの差し止めを求める訴訟が行われています。

・ 住基ネット差し止め訴訟関係のリンク集
 
・ 住基ネット差し止め・福岡訴訟  NEW
 
・ 住基ネット差し止め・石川訴訟
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 住基ネット差し止め訴訟関係のリンク集

 住基ネット差し止め・福岡訴訟  NEW

 住基ネットはプライバシー権を侵害し憲法違反だとして、福岡県の住民らが福岡県、国、地方自治情報センターを相手に、本人確認情報の削除や損害賠償などを求めていた訴訟で、福岡地裁は2005年10月14日、住基ネットは合憲であるとして、請求をいずれも棄却しました。
 当研究所の代表である黒田充は、この訴訟に関わって、2004年10月31日に「住民基本台帳ネットワークに関する意見書」(PDF)を提出し、また証人として証言も行い住基ネットの問題点を電子政府・自治体にとつて必要不可欠とは言えない点も含めて詳細に指摘しました。
 しかし、福岡地裁判決は、「(住基)法の立法目的には十分な合理性があると認められる」としたものの、住基ネットそのものの目的の正当性については判断を示さず、その必要性については「電子政府・電子自治体を実現するための基盤となる不可欠なシステム」であるとして認められるとの判断を下しました。

 もっとも、必要性について論じた判決中の当該部分は下記の通りわずか7行に過ぎず、その判断の具体的な根拠は全く示されていません。住基ネットの現状や問題点 −住民票の写しの広域交付や転出入手続の簡素化サービスの住民による利用や、手続等における住民票添付や年金現況届の省略、住基カード交付などの現状や、コスト計算を含めた問題点、さらには公的個人認証サービスが住基ネットを介さなくて実現できる点など− を具体的かつ詳細に指摘した原告の主張にも証人である黒田の主張にも具体的な判断を行っていません。裁判では、原告の主張や黒田の意見書及び証言に対し、国など被告側から反論が行われ、さらにこれに原告側が反論するなど双方が必要性の有無を重要な争点として位置付け盛んに議論を行ったにもかかわらず、裁判所がこうした議論に全く関心を示すことなく判断を下さなかったのは責任放棄といわざるを得ません。
 原告側、被告側の主張を踏まえ8頁も使って、住基ネットの目的の正当性と必要性について詳細に検討した金沢地裁と際だった違いを見せています。

 そして、このような行政サービスの向上と行政事務の効率化という
立法目的を達成するためには,住基ネットが重要な役割を果たすと考
えられるし,また,ネットワーク社会における本人確認手段としての
住基ネットは,住民が行う行政機関への申請,届出のほぼ全てをイン
ターネットで行うことを可能とする,いわゆる電子政府・電子自治体
を実現するための基盤となる不可欠なシステムともいえる。したがっ
て,住基ネットの必要性も認められる。

福岡地裁判決文

 福岡地裁・住基ネット訴訟判決文(一部抜粋)


 

 住基ネット差し止め・石川訴訟

 石川県の住民28人が住基ネットに提供された個人情報の削除と国などに一人当たり22万円の損害賠償を求めていた訴訟で、金沢地裁は2005年5月30日、住基ネットは憲法違反とし、石川県と地方自治情報センターに原告住民の個人情報の削除を命じる判決を下しました。

金沢地裁判決文

 判決文は、「JCA-NETが入手した、自治体など行政機関の情報セキュリティ状況に関する資料を、Webサイト上で提供する」プロジェクトであるWebサイト「電子政府・電子自治体情報セキュリティ関連資料提供プロジェクト」内のページの「『住基ネット差し止め訴訟』法廷資料」に、「金沢地裁における『住基ネット差し止め訴訟』の判決(全文)」として掲載されています。

 

金沢地裁判決文と「黒田意見書」の比較

 当研究所の代表である黒田充が、福岡住基ネット差し止め訴訟に関わって、2004年10月31日に福岡地裁に提出した「住民基本台帳ネットワークに関する意見書」(PDF)の写しが、金沢地裁での住基ネット訴訟において原告側から証拠として提出されています。
 この意見書が判決文に影響を与えたのか否かは知る由もありませんが、下記の通り、その一部について比較を試みてみました。

被告地自センター(引用者注:地方自治情報センター)から行政機関に対して本人確認情報が提供されることによる住民負担の軽減と行政事務の効率化
 金沢地裁判決  76頁
  本人確認情報の提供を受ける行政事務は,すでに264事務に及んでいる。これによって,住民側は,申請,届出,住民票の写しの添付等の負担が解消され,行政側としても,事務効率の向上や事務の正確性の向上が実現していることは容易に推測できる。もっとも,住民一人一人の立場から見た場合,これらの負担解消の程度がささやかであることは否定できない。
黒田意見書  4頁
  国は、住基ネットを使って本人確認情報を国の機関等へ提供することにより、行政手続き等への住民票の写しの添付を省略できる、また、年金の現況届の提出が不要になるとしている。
 確かに、住基ネットを利用すれば住民票の写しの添付を省略できるであろう。しかし、そもそも国民はどの程度の頻度で住民票の写しを必要とする行政手続き等を行っているのか。国の資料によれば、住基ネットによって住民票の写しの提出が不要になる行政手続きは年間約2500万件である。総数で見るとたいへん多いように見えるが、国民1人あたりで見ると1年あたり0.2件に過ぎず、5年に1回手続きをする程度であり、人生80年と考えれば生涯にわずか16回である。実際、住民票の写しの添付が省略できたと国が盛んにサービスの例に出すパスポート申請についても、パスポートの有効期間が5年ないし10年であることから、当然申請も5年ないし10年に1回である。さらに、パスポートについて言えば、住民票の写しの添付が省略できても、戸籍謄(抄)本の提出が引き続き必要であり、国が喧伝するほど国民には便利になったという実感はわかないであろう。
 
住民基本台帳事務の簡素化,広域化による住民負担の軽減と行政事務の効率化
 金沢地裁判決  76頁
  住民票の写しの広域交付及び転出・転入手続の簡素化が既に実現している(第2の2の(5))。しかし,住民一人一人の立場から見た場合,住所地市町村以外の市町村で住民票の交付を受けることができるというメリットを享受する機会がどの程度あるか疑問である。また,転入届出の際に転出証明書の添付を要しないとしても,付記転出届をすることが必要であること(住基法24条の2第1項),従前から転出届の郵送送付,転出証明書の郵送交付を利用して転出市町村に出頭しない方法があったこと,住民が転居する場合には,国民健康保険,介護保険等の様々な手続のために転出地の市町村役場に出向く必要がある場合が多いこと等に鑑みると,そのメリットはさしたるものではない。
黒田意見書  3頁
  住民票の写しの広域交付であるが、こちらもよく利用されているとは言い難い。例えば、京都府地方課の資料によれば、同サービスが始まった2003年8月25日から2004年3月末日までの約7ヵ月間の広域交付は1141件である。国の資料によれば住民票の写しの交付請求件数は、全国で年間約8500万件である。これを人口比で京都府に当てはめると約170万件になることから、このサービスの利用者がいかに少ないかがわかる。利用者が少ないのは他の都府県も同様である。東京都では2004年1月末日までに約11600件、大阪府では2004年3月末日までに8834件、愛知県では2004年5月28日までに2821件、長野県では2004年6月末までに1849件となっている。
 住基ネットの利便性として国は「全国どこの市町村でも住民票の写しが取れるようになる」と盛んに強調してきたにもかかわらず、利用率は交付請求総件数の1パーセントにも満たなかったのである。

 転入転出手続きの簡素化のサービスであるが、国の主張にもかかわらず転出入の際には、全くといっていいほど利用されていない。例えば、東京都総務局行政部振興企画課が2004年3月に明らかにした資料によれば、このサービスが始まった2003年8月25日から2004年1月末日までの約5ヵ月間における同サービスを利用した届出件数は、転入・転出をあわせても東京都全体で122件に過ぎない。東京都における年間の移動者数(市区町村の境界を越えて住所を移した者の数)は、毎年およそ120万人であることからも、このサービスの驚くべき低調さには、正直言って呆れ返るばかりである。
 利用がほとんどないのは東京都だけではない。大阪府では2004年3月31日までに80件、京都府では同じく14件、愛知県では2004年5月28日までに63件、長野県では2004年6月末までに24件である。全国集計は明らかにされていないが、全国的に見ても利用が極めて低調であることは間違いないであろう。
 では、なぜこれほどまで利用されないのか。このサービスで、転出地の市町村役場へ手続きのために出向くことを省略するには、あらかじめ転出地の市町村役場へ「付記転出届」を郵送等で届け出る必要がある上、転出地の市町村からあらかじめ交付を受けた住基カードを転入地の市町村役場へ提出しなければならないのである。これでは、手続きの負担が軽減されたとは言い難い。また、転出入の際には、国民健康保険や介護保険に関わる手続きや、子どもの転校手続きなど住民登録の異動に伴う様々な手続きが付随するのが一般的である。住基ネットはこうした諸手続きにまで対応しているわけではなく、転入転出手続きの簡素化のサービスを利用したとしても、結局のところ、転入地だけでなく転出地の市町村役場へも出向かざるを得ない。
 
電子政府,電子自治体の基盤(行政手続きのインターネット申請の実現)
 金沢地裁判決  78頁
  IT立国は,我が国の国家戦略であり,インターネットの急速な普及という社会情勢の中で,行政手続における申請,届出のオンライン化の推進は大きな政策課題であるということができるところ,その基盤の一つとしての公的個人認証サービスにおいて住基ネットが重要な役割を果たしているということができる。しかしながら,都道府県センターが失効情報を把握するためには,住基ネットを介さなくとも,市町村から直接提供を受ければ足りるし,電子署名の格納媒体は住基カードである必要はないから,公的個人認証サービスに住基ネットが不可欠であるとは言い難い。しかも,外国人や,オンライン申請,届出の必要性が高いと思われる企業には住基ネットシステムは使えないから,これらについては別なシステムを使う必要があること,既に「電子署名及び人証業務に関する法律」も制定されていて,オンライン申請,届出に民間事業者が発行する電子証明書を使うことが可能であること等を併せ考えると,オンライン申請,届出のために,公的個人認証サービスが必要不可欠であるとも言い難い。もっとも,公的個人認証法17条1項で,民間の認定認証事業者が行う特定認証業務に係る本人確認に公的個人認証サービスが活用できることとされたから,公的個人認証サービスが民間認証事業のインフラとしての役割を果たすこととなったということはできる。
黒田意見書  7頁
  国は、この公的個人認証サービスを実現するには住基ネットが欠かせないと主張しているのである。すなわち、住基ネットがなければ公的個人認証サービスは実現できず、そのため電子政府・電子自治体も実現できないというのである。果たしてそうだろうか。
 電子証明書の交付を受けた住民が死亡したり、住所・氏名が変わった場合、電子証明書は失効するのであるが、公的個人認証サービスでは、電子証明書の発行主体である都道府県(市町村は受付・交付窓口)から公的個人認証サービスに関する業務を委託された都道府県センター(財団法人・自治体衛星通信機構)が、失効リストをも作成することになっており、同センターは、住基ネットの全国センター(財団法人・地方自治情報センター)から死亡等の異動情報をネットワークを介して得るようにシステムは作られている。しかしながら、死亡等の異動情報は、もともと市町村において住民からの届出によって作成されるのであるから、あえて住基ネットの全国センターを介さなくても、市町村から公的個人認証サービスの都道府県センターに、電子証明書の被交付者に関する異動情報のみ直接送れば事足るはずである。また、その方が、より簡素に、より低コストでシステムを実現できるのではないだろうか。
 <略> 実は日本でも、公的個人認証サービスに先立ち、民間事業者による個人認証サービスが始まっており、既に電子申請にも利用されているのである(国・自治体への電子申請には公的個人認証だけでなく概ね民間事業者による電子証明書も利用できる)。
 <略> さらに、公的個人認証サービスは、住基ネットに依存していることから、住民登録を行っている住民にはサービス提供できるが、外国人登録をしている住民にはサービスを提供できないという致命的な欠陥を有している。民間のサービスの中には、住民登録者と外国人登録者と区別なく同等のサービスを提供しているものも多く、この点でも公的個人認証サービスの方が優れているとはとても言えない。
 
住基ネット導入により,1年間に住民が受ける利益,同じく行政側が受ける利益についての国による試算
 金沢地裁判決  82頁
  被告国の試算は,住民の半数が住基カードを所持することを前提としたもので,住基カードの現実の普及率(第2の2の(7))に鑑みると,参考に値しない。
黒田意見書  9頁
  住基ネットによって住民の負担が軽減し行政サービスが向上すると、どれほど国が主張しても、実際にそのサービスが利用されないのなら、単なる机上の空論に過ぎない。国は、平成10年3月付の文書「住民基本台帳ネットワークシステムのベネフィット(試算)」において、転入転出手続きの簡素化によって住民は274.2万時間(時給換算で32.1億円に相当)を、行政側は51.7万時間(同じく18.7億円)を節約できるとしている。しかし、この計算では470万件と見積もった転入届の内、半分がこの制度を利用するとしている。実に235万件である。が、現実はどうか。例えば全人口のおよそ1割が居住する東京都内で2004年1月末までの約5ヶ月間の転入届の内、このサービスを利用したのはわずか64件(年間に推定して154件)である。驚くべきことに、国の試算は国民(少なくとも転入届をする国民)の半分が住基カードを所持していることを前提としているのである。開いた口がふさがらないとは正にこのことであろう。  また、試算では住民票の写しの広域交付件数が交付件数全体の約12パーセントを占めるとして、住民は758.0万時間(時給換算で98.5億円に相当)を節約できると計算している。が、こちらも現実は全く違っている。先に見たように、およそ交付件数170万件と推定される京都府では2004年3月末までの約7ヶ月間で1141件、年間に直して約2000件、全体の0.12パーセントに過ぎない。
 


判決に関する報道へのリンク

 

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