自治体は住民自治のために
財政情報をいかに公開すべきか
 −自治体広報紙の比較検討からその姿を探る−

「地方分権・自治体リストラと大阪の衛星都市」
  (社)大阪自治体問題研究所編、所収

1997年10月31日   黒田 充   

−−− その1 −−−

 目 次 

       注 記


T.はじめに 

 地方自治は、地域コミュニティにおいて、中央政府の指示・介入なしにその運営を自主的に行うという意味の団体自治としての側面と、地域住民の意志に基づいてその運営を行うという意味の住民自治としての側面を持つ。
 しかしながら、住民が自らの意志で自治体の運営を行うとき、自治体とその運営に係わる情報を住民が知らなければ、住民の利益となる正しい判断は到底できない。情報が住民の手になければ真の住民自治は実現されず、情報を一手に握る一部の官僚による住民支配となってしまう。こうしたことを防ぐため、国民の知る権利の保障を前提としつつ、住民自治を実現していく保障として、全国で400近い自治体が情報公開条例を制定[1]し、さらに多くの自治体で制度化の動きが進んでいる。しかし、これらの条例の多くは、公開請求を前提とした情報公開、すなわち情報開示請求制度のみを定めたものである。もし、全ての情報が開示請求によらなければ公開されないというのであれば、むしろ実質的に知る権利を奪うものとなってしまう。開示請求を受けるまでもなく、行政に係わる基本的な情報など可能な限り、広報紙などを通じてあらかじめ住民に公表、提供しておく、もしくは公文書館や行政情報コーナーなどで住民が情報に簡単に接することができるようにしておく、また公表する情報の中身も条例で義務づけるようにする。すなわち情報提供制度や情報公表義務制度の拡充・拡大が必要である。もちろんこうした制度には、情報操作による行政の住民支配を防ぐため、提供された以上の詳細な情報の公開を請求できる、また提供された情報の真偽のほどを確認できる開示請求制度の存在を前提としなければならない。
 ところで、地方自治体の予算・決算及び予算の執行状況、財産や地方債の運営状況、さらには財政運営計画等の財政運営に関する情報、すなわち財政情報は、自治体運営における最も重要かつ基本的な情報である。住民から直接、間接に集められた税金をはじめとする資金を当該自治体がどのように配分、運用するかは、その地域に暮らす住民の生活にとって決定的な意味を持つ。福祉か、産業育成か、開発事業か、どこに重点を置くかによって住民生活は大きく影響を受ける。例えば、府下の多くの自治体では、財政危機を理由に「行政改革大綱」を作成し福祉や保健、医療サービスなどへの大幅なカットを進めようとしている。しかし、一方で開発行政や箱物行政といわれるゼネコン奉仕型の行政は続けている。こうした行政のやり方が妥当なものであるのかどうか、自治体の主人公として住民が判断する上で、本当に金はないのか、金の使い道は間違っていないのかなど財政情報を知る必要がある。したがって、財政情報は、情報開示請求制度だけでなく、先に述べた情報提供制度や情報公表義務制度の対象となるべきものである。
 では現実に、自治体の財政情報が、住民にどのように、またどの程度知らされているのか。特に、住民にとって最も身近な地域情報の提供媒体である自治体広報紙において、どのような扱いがなされているのか。住民自治にとって満足のいくものなのか、問題はないのか、改善すべき点はないのか。こうした問題意識をもとに、(社)大阪自治体問題研究所として大阪府下の各自治体の発行した広報紙における財政情報の掲載実態について比較検討を行い、住民自治にとっての財政情報公開のあるべき姿を探ることとした。以下、この調査研究に携わった者として、私見も含め結果報告を行う。

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