自治体は住民自治のために
財政情報をいかに公開すべきか
 −自治体広報紙の比較検討からその姿を探る−

「地方分権・自治体リストラと大阪の衛星都市」
  (社)大阪自治体問題研究所編、所収

1997年10月31日   黒田 充   

−−− その3 −−−

V.広報紙の評価結果 

1. 広報紙の特徴

 対象とした44市町村の広報紙から得られた特徴について、表1に沿って順次見ていく。まずサイズについては、タブロイド版が20団体、A4サイズが23団体、B5サイズが1団体。また平均ページ数は、タブロイド版で8.6ページ、A4・B5サイズが25.3ページ。発行回数は1ヶ月当たり、1回が30団体、2回が13団体、3回が1団体である。
 また、日本広報協会大阪府支部などが行った1996年度の「広報関係実態調査結果(概要)」[2]によると、広報紙の配布方法は自治会等に依頼が50.0%と半数あり、新聞折込や業者委託と併用しているところも含めると自治会等の利用は70.5%となり、自治会等に負うところが大きい。なお、業者委託のみは15.9%、折込のみは6.8%となっている。また、編集過程において、業者等へ委託しているのは40.9%で、その内容は、企画・編集、取材、原稿作成、レイアウト、イラスト、印刷等である。編集におけるDTP等コンピューターの使用については、31.8%である。
 さらに、広報紙が読まれているかどうかの点については、豊中市が1992年に行った「地域情報化に関する市民アンケート調査」の結果報告書[3]によると、「地域の情報をふだんどのような方法で入手しているか」との質問に対し、59.4%の回答者が「行政などの広報紙」と答え、2位「新聞」44.2%、3位「自治会等の回覧など」36.2%を引き離し1位となっている。また、大阪市の行った1990年の「市政モニター調査報告」[4]によると、市政についての情報源としては「市政だより(大阪市の広報誌)」が90%、次いで一般新聞が87%、テレビの報道が71%となっている。また「市政だより」をどの程度読んでいるかについては、「全体をくまなく」が47%、「興味のある記事だけ読む」が32%、「ざっと目を通す程度」が20%という状況である」。このことから、広報紙は住民にとって地域情報収集の手段としての重要な役割を果たしているものと考えられる。

2. 予算記事掲載広報紙には、何が掲載されているか

A.予算記事掲載の広報紙の特徴

 予算記事掲載紙の発行年月日については、3月発行分が3団体、4月分が31団体、5月分が8団体、3月分と4月分の両方にが1団体(大阪市)である。また、全く掲載していないのが1団体(田尻町)となっている。なお、3月発行の広報紙への掲載は、全て予算案である。
 予算記事の面積は、A4サイズへ換算して平均2.9ページで、最も大きいのが吹田市で11ページ、次が大阪狭山市で6ページ、最も小さいのは大東市の0.4ページ、次が高石市の0.8ページとなっており、記事面積にして実に30倍近い大きな開きがある。
 また、予算について掲載している当該広報紙の全紙面に占める予算記事の割合は、平均14.6%で、最も大きいのが茨木市の50.0%、次が吹田市の45.8%であり、最も小さいのは藤井寺市の2.3%、次が大東市の2.5%である。また年間の総紙面数に占める割合は、平均1.0%で、最も大きいのが茨木市の2.8%、次が大阪市の2.6%、最も小さいのは大東市の0.14%、次が泉佐野市の0.26%である。

B.予算記事の内容  表1 予算に関する財政情報の広報紙における公開状況 Excel97形式 87KB

 予算記事全体の大見出であるが、「福祉施策を充実し、安全でより質の高いまちづくりを(豊中市)」「思いやりとぬくもりのあるまちづくりに重点配分(河内長野市)」などと予算の特徴や行政の方向性を示すキャッチフレーズもしくはスローガン的なものを記すのが23紙。内、「行政改革元年予算と位置づけ、事務事業の見直しを(寝屋川市)」と行財政改革を打ち出したものが2紙。また「平成8年度予算概要」や予算額そのものなどを大見出とするものが20紙となっている。
 予算記事の掲載根拠または掲載に至った経過については、市議会で可決等が26紙。「予算がまとまる」等が5紙、記載していないのが12紙である。
 予算編成方針や予算概要について記載しているのは34紙。内、実質収支や経常収支比率などを示して説明している池田市や、歳入・歳出の内訳の前年度比較とその推移要因等について説明している吹田市など、比較的詳しく記載しているのは5紙である。
 施政方針について、予算記事掲載号に一緒に掲載しているのが25紙、内、施政方針の一部として予算の説明を掲載しているのが10紙、また予算記事の具体的な事業と施政方針の関連部分をレイアウト的に上手く結び付けているのが吹田市。全く別の号に掲載しているのは14紙。
次に一般会計について見てみる。まず、市町村税・国支出金・府支出金・地方交付税・市町村債など歳入の内訳については36紙が掲載し、1紙を除いてグラフ(円・半円グラフ27紙、棒グラフ7紙、円と棒グラフ1紙。予算額と構成比の両方26紙、予算額のみ6紙、構成比のみ3紙、税収内訳も掲載が9紙。自主財源と依存財源がわかるようにしてあるのが8紙)で表現。また内訳について説明があるのは11紙、前年度と比較し予算額・伸び額・伸び率など掲載しているのは13紙、住民1人当たりの歳入額が示されているのはごく一部も含めて8紙(グラフによる表示1紙)である。
 歳出の内訳については、民生費・土木費・教育費・総務費・公債費など目的別歳出分類については38紙が掲載し、3紙を除いてグラフ(円・半円グラフ26紙、棒グラフ8紙、絵グラフ1紙。予算額と構成比の両方27紙、予算額のみ6紙、構成比のみ2紙)で表現。また内訳について説明があるのは6紙、前年度と比較し予算額・伸び額・伸び率など掲載しているのは11紙である。人件費・物件費・扶助費・投資的経費など性質別歳出分類については目的別に比して掲載紙ははるかに少なく7紙のみで、5紙がグラフ(円・半円グラフ4紙、棒グラフ1紙、予算額と構成比の両方4紙、構成比のみ1紙)で表現。また内訳について説明があるのは2紙のみ、前年度と比較し予算額・伸び額・伸び率など掲載しているのも5紙のみである。住民1人当たりの歳出額が示されているのはごく一部も含めて14紙(内、目的別が12紙。グラフによる表示2紙。図1)である。なお、目的別と性質別の両方を掲載してある広報紙については、「同じ歳出を別の角度から分類したものである」との趣旨の説明がなく、一般の住民にとってわかりにくいものとなっている。

図1
図1 住民1人あたりの歳出額
「おおさかさやま」より

 また、歳入内訳、目的別歳出内訳、性質別歳出内訳を全てグラフ表示しているのは、吹田市、寝屋川市(図2)、四条畷市、柏原市、泉大津市の4紙である。逆に、グラフだけでなく予算概要の中も含めて内訳を全く記載していないのが、摂津市、大東市、東大阪市、藤井寺市、堺市、高石市の6紙である。たしかに、支出金や地方債、民生費や土木費、人件費や物件費などがそれぞれいくらと予算額を示されても一般の住民にはわかりづらいものではある。しかし、こうした指標は予算の最も基礎的なものであり、どこから予算がやってきて、どこへ予算が使われているかを知る上で必要なものであり、必ず掲載すべきでものであろう。行政は、「行政用語は住民にはどうせわからない」という態度をとるのではなく、むしろ、八尾市や大阪狭山市などが掲載しているような住民の理解を助けるよう「地方債とは何か、土木費とは何か」など説明文をつけるべきである。

図2
図 2 一般会計 歳入、歳出(目的別、性質別)予算内訳グラフ 「広報ねやがわ」より

 歳出予算の詳細である施策や事業の説明については、ほとんどは主要なもののみではあるが大東市を除く43紙が掲載している。これらの施策や事業をわかりやすく分類しているのは39紙で、施政方針や総合計画に基づく政策別が35紙、歳出の目的別が4紙、平均分類数は5.9である。また、分類毎の予算額表示があるのは能勢町、八尾市、羽曳野市の3紙。施策や事業毎に予算額表示があるのは32紙(平均33項目)。その内、「障害者世帯への配食サービス創設 59万円」「女性弁護士による労働相談など 172万円」「外国人のためのガイドパンフレット作成 204万円」「(仮称)秋山信子展の開催 600万円」「地域防災計画の修正 1239万円」「千里山佐井寺線道路新設事業 3300万円」「寺ヶ池公園の整備 1億8000万円」など具体的な事業について個別に予算額を示しているのは10紙(河内長野市が100項目で最高数、次が吹田市の81項目)で、他は「環境対策」「福祉」「学校教育」など大きなくくり毎に予算額を表示している。また羽曳野市は主要施策・事業だけでなく一般・特別会計のほとんど全ての事業を「道路交通網の整備」「都市基盤の整備」「高齢者福祉」「中学生のために」など大きなくくりの50項目に分類し、項目毎の予算額を表示し、さらに市民1人当たりの予算額も掲載している。施策や事業内容については事業名のみが8紙、説明があるのは17紙(特に吹田市<図6>、富田林市、河内長野市<図7>、千早赤阪村<図3>、貝塚市は詳しい説明あり)である。住民が予算について最も知りたいのは、どのような施策や事業が、どこで、どんな目的で行われ、いくら予算を使うのかである。また詳しく載せることによって、住民の関心も高まり、行政への住民参加も進むと考えられる。紙面の都合もあるであろうが、可能な限り具体的に、また詳細に記すべきである。

図3
図3 施策・事業の詳細
「広報ちはやあかさか」より

図4
図4 会計別予算額表 「広報しじょうなわて」より

 次に特別会計・企業会計であるが、全く触れていないのが東大阪市、泉南市、田尻町の3紙、会計別予算額表(図4)を掲載しているのは36紙(グラフによる表示含む)。内、対前年度伸び率を表示しているのは24紙、また企業会計で資本的収支・収益的収支に触れているのは4紙のみである。予算内容について何らかの説明がなされているのは、大阪狭山市、河内長野市、熊取町など5紙のみ。以上のように、特別会計・企業会計は一般会計に比べてかなり扱いが小さく、内容も大雑把なものとなっている。しかし、特別会計の予算額は、一般会計に比して決して小さいものではなく、例えば全く掲載していない東大阪市では、一般会計1,632億円に対して特別・企業会計は1,556億円、泉南市では182億円に対し162億円と一般会計とほぼ同額になっている。またその内訳を見れば、下水道事業や老人保健、国民健康保険の各特別会計がほぼ全ての自治体において大きな部分を占めており、住民生活にとって身近であり重要な予算である。これだけの予算額を持ち、住民生活に多大な影響を与える会計について何ら説明しないのでは住民自治とはいえない。

図5
図5 用語の解説
「おおさかさやま」より


 予算に係わる用語の解説は、11紙(大阪狭山市の例 図2図5)が簡単なものも含め何らかの形で行っているが、一般住民から見た場合の行政用語の難解さ、親しみの無さから見て、その扱いは極めて不十分である。
 施策・事業内容を示す写真・図等については29紙が掲載しているが、中には何の写真か説明の付いていないものもある。
 また、レイアウト等の工夫については、豊中市や吹田市、河内長野市、大阪狭山市など読みやすく、理解しやすいように良く考えられているものがある一方、詰め込み過ぎや、記事の流れのわかりにくいものも多い。また、大阪市は予算案(1997/3号)と予算(1997/4号)について2回にわたって掲載していることは評価できるが、予算記事には、予算案記事に掲載されていた歳出・歳入の内訳などが掲載されていないため、結果的に予算を知ろうというときには二つの号を合わせて見ないと、全体像を理解しにくいものとなっている。
 掲載内容の問合せ先については、財政課と明記してあるのは寝屋川市、枚方市、八尾市、堺市の4紙のみである。広報紙をつくる職員にとっては、「予算のことは財政課」は、当たり前のことかも知れないが、書かないのは一般の住民に対して不親切である。また、「予算書は行政情報コーナーで閲覧できます」等の案内は池田市、八尾市の2紙のみである。府下ではこの2市を含め14自治体が情報公開条例を制定し、中には吹田市のように情報コーナーを設け、財政関係書類を閲覧できるようにしている自治体もいくつかある。しかし、そのことを明記していないのもやはり不親切である。

3. 総合的に評価してみると

 以上見てきた掲載事項について、それぞれ3段階(a、b、c)の評価基準を設定し、各広報紙について各項目毎の評価を行い、これらの結果をもとに総合的に判断し、掲載記事全体をA、B、Cの3段階で評価した。評価基準及び結果は(表2 予算記事掲載紙につての評価付け表 HTML形式 95KB Excel97形式 47KB)の通りである。全ての項目がA評価に値する広報紙はなく、44広報紙の中で総合的に見て比較的良いと思われるA評価は、吹田市と河内長野市の2紙(5.5%)のみとなった。B評価は豊中市、寝屋川市、羽曳野市、岸和田市、河南町、熊取町など16紙(36.4%)、C評価は過半数を超え池田市、摂津市、守口市、東大阪市、松原市、堺市、泉佐野市、大阪市、島本町、忠岡町など25紙(56.8%)となった。なお、田尻町については、広報紙に予算記事が見当たらないため評価の対象外とした。

表2 予算記事掲載紙につての評価付け表(抜粋)   全文 HTML形式 95KB Excel97形式 47KB

  ブロック名 北大阪 東大阪 南河内 泉州    
豊能 三島 北河内 中河内 泉北 泉南
評価基準 豊中市 池田市 箕面市 豊能町 能勢町 吹田市 摂津市 茨木市 高槻市 島本町 守口市 門真市 寝屋川市 枚方市 大東市 四条畷市 交野市 東大阪市 八尾市 柏原市 松原市 藤井寺市 羽曳野市 富田林市 大阪狭山市 河内長野市 美原町 太子町 河南町 千早赤阪村 堺市 高石市 泉大津市 和泉市 忠岡町 岸和田市 貝塚市 泉佐野市 泉南市 阪南市 熊取町 田尻町 岬町 大阪市 評価別集計
項目 評価
歳入についての総合評価 良い 普通 悪い 3 27 13
歳出についての総合評価 良い 普通 悪い 1 15 27
歳出予算額の詳細についての総合評価 良い 普通 悪い 7 20 16
特別会計・企業会についての総合評価 良い 普通 悪い 1 27 15
用語の解説 詳しく 簡単に なし 2 9 32
創意工夫・問題点等の総合評価 良い 普通 悪い 4 11 28
問合せ先、情報公開など 担当課、情報公開の案内の両方 担当課または、情報公開の案内 なし 1 5 37
予算記事掲載広報紙の総合評価 豊中市 池田市 箕面市 豊能町 能勢町 吹田市 摂津市 茨木市 高槻市 島本町 守口市 門真市 寝屋川市 枚方市 大東市 四条畷市 交野市 東大阪市 八尾市 柏原市 松原市 藤井寺市 羽曳野市 富田林市 大阪狭山市 河内長野市 美原町 太子町 河南町 千早赤阪村 堺市 高石市 泉大津市 和泉市 忠岡町 岸和田市 貝塚市 泉佐野市 泉南市 阪南市 熊取町 田尻町 岬町 大阪市 評価別集計
良い 普通 悪い 2 16 25

 A評価となった2紙について簡単に紹介すると、吹田市(図6)については、1具体的な施策・事業と、それに関連する施政方針部分とをレイアウト的に上手く結び付けて掲載している 2歳入・歳出(目的別・性質別)の内訳について対前年伸び率も含めグラフでわかりやすく表示している 3歳入と歳出(目的別)の内訳について予算概要で比較的詳しく解説している 4事業内容を説明する写真が効果的であり、またレイアウトも読みやすいように良く考えられている 5特に評価できるのは、81件の施策や事業が名称だけでなく予算額を伴ってその内容が具体的に記載されている点である。
 また、河内長野市(図7)については、1歳入・歳出(目的別)の内訳についてグラフでわかりやすく表示している 2事業内容を説明する写真が効果的であり、レイアウトも読みやすいように良く考えられている 3さらに評価できるのは、100件の施策や事業を総合計画にしたがって7つに分類し、予算額を伴って掲載した上、その内8事業については写真をつけて詳しく説明している点である。

図 6 広報すいた [略]

図 7 広報かわちながの [略]

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