![]() | パソコンとインターネットと、市役所の『明日』 12 |
政府の電子自治体構想の最大の問題点は、住民の要求に基づいていないことです。住民の多くは、子育てや高齢化、健康、医療、営業など様々な暮らしの悩みを抱え、その解決を自治体に迫っています。一方、自治体も、こうした住民の願いに、限られたマンパワーと財源でどう応えていくか、日々、苦労しています。
しかし、電子自治体構想は、政府の独断による一方的で画一的なものであり、こうした問題の解決に全く対応していません。インターネットで保育所入所申請ができても、待機児は解消しません。介護保険の手続ができても、保険料や利用料の重さは同じです。税申告ができても、不況で苦しむ中小企業や商店には、そのための新たな経費が必要となるだけです。むしろ、2003年度までの短期間に電子市役所をつくるために、多くの職員と税金が使われ、差し迫った暮らしの問題の解決は遠退くことになるでしょう。
また、政府の構想通り進んだなら、職員が住民と直接接触する機会は減少し、住民や地域をパソコン画面を通して見ることになり、その実態をリアルに掴めなくなるでしょう。機械で処理可能かどうかが、新たな施策を実施する上での判断基準になるかも知れません。電子申請に対する判断の多くが、コンピュータによって自動化されれば、職員としての知識や経験は重視されなくなるでしょう。
その上、経済的な理由や身体的な障害などによりインターネットを利用できない、パソコンを使えない住民を切り捨てることにもなるでしょう。
もっとも、筆者は行政の情報化そのものを否定しているのではありません。住民の暮らしや願い、地域の実情に合った情報化であれば、住民参加で、自主的に進めていくべきだと考えています。
インターネットは、人類が二十世紀に発明した偉大な道具、未来を切り開く可能性を持った道具の一つです。一部のものの利益に奉仕するのではなく、圧倒的多数の国民の利益に適う形での利用を民主的に議論していく事が、必要ではないでしょうか。