『電子自治体』政策批判 3−(3)−d 

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3.『電子自治体』政策の問題点(続き)

3) 形骸化される地方自治(続き)

執筆中

d.事務の標準化と公務員制度改革

 IT関連の大手企業は、『電子自治体』を実現するためのシステムの開発と、自治体への売込みを盛んに行なっている。こうしたシステムは、当然ながら、「自治事務等に係る申請・届出等手続のオンライン化の推進に関する政府の取組方針」に基づき各省庁が示す「標準仕様」に依拠して開発される。電子自治体が実現された暁には、自治体職員は、こうした企業の手によって作られた標準化された業務を処理するためのシステムで、日々の仕事をこなすことになる。そうなれば、自治体が条例等に基づき独自の規制などを ―― 政府の示した標準仕様の範囲を超えて ―― 行なうことは、おそらく困難となるであろう。
 なぜなら、独自の規制などを行なうためには、申請・届出等のシステムの改変は避けられないが、プログラム等を修正するには高度な専門的知識(標準化された汎用システムへの理解も)が必要であり、自治体職員が行なうのは困難だと思われるからである。また、修正を企業へ委託した場合、委託費の支払いが必要となるが、昨今の地方財政の状況から見て、おいそれとは発注できないであろう。
 したがって、『電子自治体』においては、独自の規制などを行なうかどうかを決めるに際して、住民にとっての必要性よりも、現行のシステムで処理可能かどうかが、判断材料として大きな位置を占めるようになるであろう。職員は、機械に合わせて仕事を組み立てるようになるのである。
 また、市役所に訪れる住民は年を追って減少する ―― 経団連は、オンラインによる行政手続の利用を確保するために、納税額や手数料の削減などのインセンティブの導入を提案している ―― であろうから、職員が住民と直接接触する機会も減少することになる。自治体職員は、住民や地域をディスプレイを通して見ることになり、住民の置かれている状況や地域の実態をリアルにつかめなくなるであろう。
 こうして、自治体職員からは住民の要求に応えるために創意工夫をしようという意欲が、また、住民からは自治体と職員が要求に応えてくれるであろうという期待が、限りなく減少するであろう。

 さらに、ネットを経由して届く申請などに対する判断の多くが、システムに実装されたプログラムによって、自動的に処理されることもと予想される。既に、介護保険による要介護認定の一次判定は、厚生労働省の基準によって処理されるコンピュータプログラムによって行なわれている。こうしたやり方が、他の多くの業務に広がらないという保障はない。職員としての主体的な ―― 様々な経験に裏打ちされた深く広い知識を基にした、時には臨機応変な ―― 判断は、必要とされないであろうし、ブラックボックス化されたシステムに入りこむ余地もないであろう。

 ところで、この6月に政府の行政改革推進本部において「公務員制度改革の基本設計」が決定された。
 一般に、コンピュータを使った業務においては、個々の職員の処理量を容易に計測し記録することが可能であり、これらは、職員の評価にも活用できる。また、判断をコンピュータが自動的に行なうようになり業務が定型化されれば、専門知識だけでなく、業務への習熟 ―― タイピングとマウス操作を除けば ―― も重要視されなくなるであろう。特定の業務に、特定の職員を長期に渡って貼り付ける必然性もなくなるのである。
 『電子自治体』によって、職員を業務処理量でリアルタイムに評価し、いつでも自由に異動することが可能となるのである。公務員制度改革の柱の一つである「信賞必罰」の人事・給与制度に対して、『電子自治体』は、極めて親和性があると言える。
 また、公務員制度改革には、「企画立案と執行の分離」の推進が、外部委託等の活用と伴に盛り込まれているが、これもまた『電子自治体』の得意とする分野である。執行部門の最たるものの一つである申請・届出等の処理は、『電子自治体』のもとでは判断を伴わないものとなる。正規職員でなくとも、アルバイトや派遣労働者でも可能だとされるであろう。自治体業務の標準化とオンライン化(処理する場所が役所になくてもかまわない)によって、執行部門を請け負う企業が、全国的なスケールをもって出現するかも知れない。

 経済界が要求し、政府が進める『電子自治体』は、自治体職員にとって「パソコンで仕事をしろと言われても、機械は苦手。これからはたいへんだ。」と言ったレベルに収まるようなものではない。公務労働・公務員制度の根幹にも関わる問題なのである。

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