『電子自治体』政策批判 2−(4) 

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2.なぜ急ぐ、『電子自治体』構築(続き)

4) 経団連「2003年度に全手続きの完全オンライン化を」

 同年11月6日のIT戦略会議・情報通信技術(IT)戦略本部第5回合同会議で、IT国家戦略起草委員会から示された基本戦略の草案は、これまでの政府方針を踏襲し「2003年度に向けて行政手続きのオンライン化を柱とする実現計画を定める。2003年度内に、計画の実施状況について評価・分析し、その後、新計画を策定・実施する」としていた。
 しかし、これに対し、同会議の席上、ある委員(議事要旨には発言者の名が明記されていない)から、電子政府実現の目標について、

 経団連の意見は、2003年度までに24時間365日、自宅、職場からインターネットで国の実質的にすべての行政手続を可能にし、2002年度内に大半の行政手続についてこれを実現するという踏み込んだものであるが、草案ではかなり柔らかい書き方になっている。今回のIT戦略会議はタイムテーブルをきちんとつくって、その実行状況をフォローするということに大眼目があったはずなので、例えば2003年度内にすべての行政手続が電子的に受付が可能になるようなことをせめて目指すということで結構なのでもう少し踏み込んだ書き方をしていただきたい。

との意見が出された。発言の趣旨から考えて、おそらく、(社)経済団体連合会(経団連)の副会長であり、同情報通信委員会委員長でもある岸暁委員(東京三菱銀行会長)であろう。

 経団連は、これに先立つ8月、「デジタル・オポチュニティを個人・企業・社会に開くために」との副題のついた「『一つ』の電子政府実現に向けた提言」を発表している。提言は、電子政府は、「国・地方を問わず、行政のあらゆる分野でITを活用することであり、国民サービスの質的向上と行政運営の効率化・スリム化を目指したもので」あり、その実現は、「『社会』全体のIT化を推進し、全ての『個人』、『企業』がIT革命がもたらすデジタル・オポチュニティを積極的に活用することを可能に」し、「グローバルな規模で経済社会の構造が変化する中、電子政府は21世紀の日本に豊さと活力をもたらす重要な取り組みである」とその意義を述べている。
 そして、その上で、「制度・政策は産業界の国際競争力に大きな影響を及ぼしており、政府も国際的な制度間競争にさらされているという意識を持って、電子化された『世界最高水準』の政府を目指す必要が」あり、「電子政府化の取り組みを早急に強化・加速しなければならない」とし、「21世紀初頭に『世界最高水準』の電子政府を実現するためには、2003年度までに添付書類等のオンライン提出やインターネット・バンキング等による行政手数料の納付を含め、行政手続の100%完全オンライン化を実現することとし、2002年度までには大半の行政手続のオンライン化を達成すべきである」と提言している。
 要するに、国際競争力に大きな影響を与える電子政府を、21世紀初頭に「世界最高水準」で実現するには、2003年度までに、行政手続の100%完全オンライン化を実現しろということである。

 この提言は、「2003年度に全手続きの完全オンライン化を達成していただきたい」とする「電子政府実現に向けたIT投資と行政の業務改革の同時実施について」の文書とともに、同年9月20日に行われたIT戦略会議・情報通信技術(IT)戦略本部第3回合同会議」に提出されている。
 11月6日の第5回合同会議に示された基本戦略の草案に書かれた「電子政府実現の目標」に対する意見で出された「経団連の意見」とは、この提言である。
 こうした経団連の意見を取り入れる形で、11月27日に開催された第6回合同会議に出された「IT基本戦略」(案)には、電子政府を2003年度に実現することが盛り込まれた。「基盤を構築する」としていた、これまでの政府方針よりも、計画は大きく前倒しになったのである。

 以上、「電子政府を2003年度に実現」が決定されるまでの経過を見てきたわけであるが、実のところは「IT基本戦略」によって、初めて政府方針化されたのではない。
 2000年10月19日に経済対策閣僚会議でまとめられた「日本新生のための新発展政策」には、「最高水準の電子政府の早期達成」として「インターネット等を利用してペーパーレスで手続を完了できる申請・届出等国の行政手続のオンライン化の実現について、平成15年度までの完全実施及びその実施の前倒しを目指す」と明記されいる(経団連の「提言」との驚くべき相似性にも注意)。
 「基本戦略の草案」が、11月6日のIT戦略会議・情報通信技術(IT)戦略本部第5回合同会議に、起草委員会から提出される20日ほど前に、既に「(実質的に)電子政府を2003年度に実現」することが政府方針として決まっていたのである。IT戦略会議・情報通信技術(IT)戦略本部の合同会議では、まるで決まっていないが如く議論していたことになる。堺屋経済企画庁長官は、どちらにも参加していたはずであるが、第5回合同会議の議事要旨を見る限り、このことについて堺屋長官からの説明はない。
 詰るところIT戦略会議も、少なくとも電子政府に関わっては、政府が財界の意向を受けて作り上げた政策に、大義名分を与えるための従来型の『審議会』に過ぎなかったようである。

 ところで、「e-Japan戦略」によって「2003年度に電子政府を実現」が方針化された後も、スケジュールのさらなる前倒しが進行しているようである。
 2001年6月26日、IT戦略本部は「e-Japan2002プログラム」を決定した。プログラムは、電子政府について「平成15年度までに電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現するため、平成14年度中に全府省において、申請・届出等手続の電子化に関わる共通的基盤システムを整備するほか、行政情報の電子的提供、政府調達の電子化等を推進する」としている。これは計画の実質的な前倒しである。第12回経済財政諮問会議(2001年7月10日)において、片山虎之助総務大臣は次のように発言している。

 促進での景気回復は、Eガバメントが一番わかり易く、国民にも便宜、恩恵が大きい。地方はITで競争をやっている。2年後には申請、届出などを全部オンライン化する、それを3〜4割前倒しするということでe-Japan2002プログラムをつくった。

 「構造改革」の早期実行を求める経済界の強い意向を受け、これからも電子政府実現計画のさらなる前倒しが行なわれる可能性は大きい。しかしながら、現実的には、いくら計画を前倒しにしても ―― 少なくとも自治体においては ―― 実際の作業が間に合うのかどうか、実現へ向けた財政的な裏付けも含めて、たいへん怪しい。
 政府とそのバックにある経済界に急かされて無理やりことを進めていけば、結局のところ、住民の暮らしや要求と大きく乖離した住民にとっては極めて中途半端で使い勝手の悪い『電子自治体』が日本列島に並ぶことになるであろう。これでは、無駄な公共事業の二の舞いである。喜ぶのが、ゼネコンから情報通信産業に代わるだけだ。

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