住民基本台帳法の一部を改正する法律案に関する国会での審議 

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第145回国会 衆議院本会議 1999年6月15日

衆議院議事録

当サイト管理者による解説
 地方行政委員会における審査の経過及び結果の報告(坂井隆憲委員長)を受けて、宮路和明(自由民主党)が賛成討論。古賀一成(民主党)、春名直章(日本共産党)、知久馬二三子(社会民主党)が反対討論を行なった。
 その後、採決に移り、自由民主党、公明党・改革クラブ、自由党の賛成多数により可決。
 ※ 強調は、当サイト管理者による。


 日程第一 住民基本台帳法の一部を改正する法律案(第百四十二回国会、内閣提出)
議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。地方行政委員長坂井隆憲君。
    ―――――――――――――
 住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔坂井隆憲君登壇〕
坂井隆憲君 ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資するため、住民票の記載事項として新たに住民票コードを加え、住民票コードをもとに、市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の機関等に対する本人確認情報の提供を行うための体制を整備し、あわせて住民の本人確認情報を保護するための措置を講じようとするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、住民票の記載事項として住民票コードを追加し、これをもとに住民票の写しの広域交付及び転入転出手続の特例を設けることとしております。
 第二に、市町村長は、氏名、生年月日、性別、住所、住民票コード及びそれらの変更情報を本人確認情報として都道府県知事に通知し、都道府県知事は、別表に掲げる国の機関等から、別表に掲げる事務の処理に関し、住民の居住関係の確認のための求めがあったときなど、この法律に定められた場合に限り、本人確認情報を提供し、また、みずからの事務の遂行のためこれを利用することができることとするとともに、自治大臣の指定する指定情報処理機関にその処理事務を委任できるものとしております。
 第三に、市町村長、都道府県知事、指定情報処理機関及び国の機関等は、本人確認情報の安全確保措置を講ずることとし、定められた目的以外の本人確認情報の利用、提供を禁止するほか、関係職員等に秘密保持義務を課すとともに、住民票コードの利用権限を有しない者の住民票コードの告知要求及び住民票コードの記録されたデータベースの構成を禁止するものとしております。
 そのほか、住民基本台帳に記録されている者は、市町村長から住民基本台帳カードの交付を受けることができるものとすることとしております。
 本案は、昨年の三月、第百四十二回国会に提出され、継続審査に付されていたものでありまして、今国会におきましては、去る四月十三日の本会議において趣旨説明と質疑が行われました。
 本委員会におきましては、同日野田自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、同月二十日審査に入り、五月六日には参考人質疑を行うなど、慎重に審査を行いました。
 審査におきましては、住民基本台帳ネットワークシステムの導入のメリット、地方分権との関連性、コストベネフィット、プライバシー保護及びセキュリティー対策、システムの利用の拡大に関する見解、民間部門を含む個人情報保護法制定の必要性、国民総背番号制への危惧に対する見解、ICカード導入の必要性等、広範多岐にわたって論議が行われました。
 また、六月八日、本案に対し自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の三会派共同により、この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする旨の修正案が提出され、その趣旨の説明を聴取し、原案と修正案について一括質疑を行いました。
 なお、これに関連して、同月十日には小渕内閣総理大臣に対する質疑を行い、総理から、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たっては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提である旨の答弁がありました。
 同日質疑を終局し、翌十一日原案及び修正案について討論を行い、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、よって本案は修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
議長(伊藤宗一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。古賀一成君。
    〔古賀一成君登壇〕
古賀一成君 本日採決することになりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同修正案につきまして、民主党を代表して、反対の討論を行います。(拍手)
 本法は、四月十三日、この本会議において付託となり、以来、地方行政委員会で審議、参考人の意見聴取等を重ねてまいりました。
 本改正案のねらいは、第一に、これまで市町村が固有事務として作成してまいりました住民基本台帳をコンピューター化し、都道府県を経由して中央の指定情報機関とオンラインで結び、全国民の本人確認情報について全国ネットワークを構築しようとするものであります。本人確認情報とは、国民一人一人につけられる住民票コードという名の番号と、氏名、性別、生年月日、住所とされているところであります。
 次に、全国センターに集められました本人確認情報は、十六省庁九十二の事務にわたりまして、本人確認業務に提供されることとされているところであります。また、今回の改正により、市町村は自治省令で定める様式と条例により、八千字のICメモリーを持つ住民台帳カードを発行できることとされているのであります。
 我が国初の国民通し番号導入を図ろうとする本改正案で、我々民主党が常に問題視し、質疑を重ねてまいりましたのは、まず何よりもプライバシーと人権の問題、すなわち、個人情報漏えいの危険性、個人情報保護の必要性でありました。システムホールと呼ばれる情報漏えいの穴があちこちにあるサイバーネットワークでありまして、全国民の情報をゆだねる危険性というものは、決して小さいものではありません。このシステムホールから大量の国民の情報が漏れる危険性は、ぬぐえないのであります。
 特に、住民票コードが漏えいし、検索ナンバーとして集められれば、行き着く先は民間の名簿屋によるデータマッチング、あるいは企業による名寄せであり、プライバシーが侵されていく危険性は、極めて大きいと言わなければなりません。また、国民の個人情報が次々と行政機関によって集約、管理される国民総背番号制の第一歩ではないかとの強い懸念も指摘されたところであります。
 これからの情報化社会のキーワードは、速いあるいは便利ではもはやありません。ここまで進化し、拡大してきた情報化社会のキーワードは、セキュリティーあるいは個人情報の保護そのものであらねばならないと思うのであります。(拍手)
 政府が言う、住民票の写しが他市町村でもとれる、こういう便利さ、これは、個人情報の漏えいやデータマッチングの恐ろしさに比べれば、ささやかな、しかもめったにない便利さにしかすぎません。
 本改正案の審議中にも、NTTと宇治市市役所という二つの公的機関で大きな情報漏えい事件が発覚をいたしました。住民票コードという国民通し番号は、名簿屋や企業から見て、データマッチング、名寄せのキーナンバーとして極めて魅力的であり、これまで以上に漏えいが怖いと覚悟を決めて、万全の措置を講ずる責任が政府にはあるのであります。
 本改正案の第一の論点、個人情報漏えいの危険性については、工夫してはあります。しかし、総体としては決して十分でない、それが審議を行った上での我々の結論であります。具体的にその危険性を指摘したいと思います。
 第一に、十六省庁九十二の事務に提供される本人確認情報の漏えいの危険性であります。
 つなげば漏れる、漏れたら瞬時に大量の情報が漏れる、これはサイバーネットワークの世界の常識とも言われております。本法案では、まず、一般公衆回線を使わざるを得ない市町村間のデータのやりとりが危険であります。指定情報機関のコンピューターから国民の本人確認情報をもらう十六省庁のコンピューターが、各部局の多数のコンピューターと接続され、それがさらに一般公衆回線とつながっている現実があり、ハッキングによる情報の漏えいの危険性はぬぐえないのであります。
 また、本法案は、本人確認情報を得た官庁が自分で利用するだけではなく、他へ提供することを許しており、極めて危険と言わざるを得ません。さらに指定情報機関の業務委託先もあります。あちこちで無造作に個人情報のファイルがつくられ、そこから情報が漏えいする危険は大きいのであります。特に住民基本台帳のコードの一覧は、不注意で漏れるだけではありません。必ずねらわれる、そういう存在と覚悟をしなければならないものであります。
 次に問題にすべきは、全国一億二千五百万人について付番した住民票コード、これを管理するのが一つの財団法人、民間法人ということであります。
 行政機関の増設はまかりならない、既設機関は廃止することができない、ほかでもやっている財団法人であるならば文句はなかろう、こういう発想でいとも簡単に全国民の基本情報が民間の公益法人にゆだねられ、全国センターの重大任務を担うことになったのであります。それほど国民の情報は軽いのでありましょうか。
 国民とは国家にとって何なのか。全国民の基本情報の重要性はいかばかりのものであるか。これが入ったコンピューターは、だれが所有し、だれが管理すべきか。こういう一番重要な、大切なものを忘れた、本末転倒の論理と言わなければなりません。民間の公益法人が全国民の情報を集約、管理するこの仕組みは、個人情報保護法制ができようができまいが、本法案に内在する問題点と言えます。
 第三に指摘すべきは、地方自治との関連であります。
 本来、住民基本台帳の作成、管理は、地方自治体の固有事務として営々とつくり上げられてまいりました。この間、住民のプライバシー保護を図る観点から、多くの市町村でプライバシー保護条例が論議され、制定を見てきたところであります。まさに地方自治として、住民基本台帳の事務はあったのであります。しかるに、本改正案は、市町村がつくり上げてきた固有事務の成果の上に、指定情報機関という情報の中央集中機関を配置し、都道府県から委託料まで取って十六省庁九十二事務の本人確認業務に提供しようとするものであります。
 委員会の審議の過程では、納税者番号としての活用も視野にある、あるいは今後多くの中央官庁の業務にこれが拡大利用される、こういう方針が大臣から披瀝されたところであります。ならば、堂々とその将来展望を示し、国の事務として構成し、国の負担と責任においてこのシステムを構築すべきではありませんか。
 本改正案は、総体として見れば、市町村を本人確認情報全国ネットワークの入力端末として位置づけておるものであり、市町村の苦労の上に安易につくられる中央集権型の国民情報ネットワークとやゆされかねないのであります。
 第四に、本法で導入されようとしているICカードの問題についてであります。
 情報化社会にも光と影がある、修正案の質疑に当たって、小渕総理はこのような趣旨の答弁をされました。影の部分を検証しながら光を求めていく、それが情報化社会の道のりと私も考えます。全国のいろいろな地域、企業グループがICカードの試みを行っている、これもその道程の一つであります。
 しかし、今度の法改正で提案されている住民票カードは、住民票コードなど本人確認情報については、自治省令により全国規模で統一されるものであります。八千字のメモリーから見て、今後何が全国的に展開されてくるのかわからない、これが率直な懸念であります。各自治体がモデル事業で検証を行い、より安心でより便利な技術とシステムを構築した上で、自主的な地域カードシステムをつくってみる、これが本来のあるべき姿ではないでしょうか。
 以上、主要な論点についてのみ、本改正案に対する懸念と反対の論旨を述べました。総括すれば、本改正案は三十時間を超える質疑を行ったとはいえ、論点はまだまだ数多く残され、政府の答弁も決して国民の懸念を晴らしているものではありません。
 最後に、本改正案附則に、個人情報保護に関する所要の措置を将来講ずるとの規定を盛り込む等の修正案が自自公共同で提案をされました。今後の個人情報保護法制の整備についても私から意見を申し述べたいと思います。
 まず、本改正案の施行は、三年以内とされているところであり、一方、本修正案は、速やかに所要の措置を講ずるとしております。ならば……
議長(伊藤宗一郎君) 古賀一成君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
古賀一成君(続) はい。二、三年のうちに包括的個人情報保護法制を整備し、それを前提としたネットワーク法制を今つくればよろしいのではないでしょうか。私は、改正法は施行された、しかし、個人情報保護法制は結局できなかった、こういう結果を恐れるものであります。今後、この論点につきましては、国会として注目をし、必ず実行をされることをこの国会が見守っていかなければならない、こう申し上げ、民主党の反対討論を終わります。(拍手)
議長(伊藤宗一郎君) 宮路和明君。
    〔宮路和明君登壇〕
宮路和明君 私は、自由民主党、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となっております住民基本台帳法の一部を改正する法律案及びその修正案に対し、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)
 政府提出の住民基本台帳法の一部を改正する法律案は、二十一世紀の高度情報化社会に向けて、行政サービスの重要な基礎となる全国的な本人確認システム、すなわち住民基本台帳ネットワークシステムを導入しようとするものであります。
 このシステムは、市町村が住民基本台帳制度を運営するという制度の基本的枠組みを堅持しつつ、市町村、都道府県が共同して構築、運営するものであり、このように、地方公共団体自身が全国的な広域連携を図っていくことは、まさに地方分権の精神に合致するものであります。
 また、このシステムは、近年におけるコンピューター等の技術の飛躍的発展に呼応して、住民サービスの向上を図るとともに、国、地方を通じた事務の省力化、効率化等、行政改革にも大いに資するものであります。
 具体的には、住民の利便の向上として、全国どこの市町村においても自分の住民票の写しがとれること、資格申請や受験等の行政手続の際に住民票の写しを添付しなくても済むようになること、さらに住民基本台帳カードを利用した場合には、多様なサービスや広域的なサービスを受けられるようになること、最近多発しているいわゆる成り済まし転出等の不正行為を、住民基本台帳カードを使って防止することができることなど、さまざまなメリットがあるところであります。
 また、行政改革の観点からは、窓口業務の簡素化により、窓口人員の一部を、今後地方公共団体の役割が増大する分野で活用することができること、国の行政機関においても、このシステムから本人確認情報の提供を受けることにより、事務の簡素化、効率化が図られることなど、数多くのメリットがあるところであります。
 改めて申し上げるまでもなく、このシステムが円滑に運営されるためにはプライバシーの保護に万全の対策が必要であり、地方行政委員会においても、この点に最も重点を置きながら、三十時間以上にわたって慎重かつ十分な審議を尽くしてまいりました。私は、この審議は、民間部門をも含めた個人情報保護の議論のきっかけとなる、歴史に残る大変充実したものであったと高く評価したいと思います。(拍手)
 委員会審議の中では、このシステムの導入について慎重な御意見もありました。しかし、単に案じているばかりでは何も変わらないのであります。今や、二十一世紀を目前に控え、こうした時代の要請に迅速かつ的確にこたえるのが政治の役割であり、我々は、未来を切り開くためには、先を見据えた建設的な議論を行い、常に前進しなければならないと思っております。
 こうした観点から、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党は、個人情報の保護に関する法律について、今国会中に検討会を設置の上、法制化の検討に着手し、年内に基本的枠組みの取りまとめを行い、三年以内に法制化を図ることで合意いたしました。そして、今後三党で十分連携をとりながら、できる限り早急に法制化を図るよう、強く政府に働きかけてまいりたいと考えております。
 以上のような理由により、私は、住民基本台帳法の一部を改正する法律案及びその修正案に対して、賛成の意を表するものであります。
 なお、政府提出の法律案においても、プライバシー保護に格段の配慮がなされているところでありますが、政府におかれては、修正案及び国会における審議を十分に踏まえ、住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たって、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えていただくとともに、あわせて、地方公共団体に対し、改正の内容を周知徹底されつつ、地方分権の時代にふさわしいシステムを構築されるよう強く希望するものであります。
 以上で、この法案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)
議長(伊藤宗一郎君) 春名直章君。
    〔春名直章君登壇〕
春名直章君 私は、日本共産党を代表して、住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。(拍手)
 反対の理由の第一は、地方行政委員会の審議の中でも最大の焦点となった個人情報保護措置が、修正を施してもなお不十分であり、不備であるという点であります。
 今、現行制度のもとでさえ、住民基本台帳の閲覧制度を利用した不特定多数に送付されるダイレクトメールに、プライバシーが侵害されたと感じる国民が増加をしております。こうした現状を反映して、市町村の担当者からは、住民基本台帳の閲覧を公用請求以外は禁止してほしいとの要望さえ出されているのであります。
 包括的個人情報保護法も個人情報オンブズマン制度もない日本の現状のもとで、氏名、住所、性別、生年月日の四情報と住民票コードを全国ネットで結ぶこのシステムを導入するなら、今でも後を絶たない個人情報漏えい事件がさらに広がり、大量の個人情報が流出される危険が飛躍的に高まることは間違いありません。プライバシーの権利とは、自己の情報をコントロールする権利であるとの立場に立って、個人情報保護に万全を期すことが厳しく求められていたのであります。
 ところが、本法案は、不正に個人情報を利用された場合の中止請求権、情報の提供を受けた行政機関の、データの目的外使用についての刑罰規定も明記をされておりません。また、他の目的への流用防止に欠くことのできない、利用後の情報消去という重要な問題についても、自治省令に基づく管理規程で定めるとし、法案には明記されていないのであります。
 民間への住民票コードの任意提供についても、これを禁止する有効な対策がありません。委員会の審議の中でも、修正案提案者の党からもこの点が指摘され、本法施行前の再改正を求めるという事態となっているのであります。本法案の欠陥は明らかであります。自由民主党、公明党・改革クラブ、自由党の三党修正案で、個人情報保護のための所要の措置を講ずることがうたわれましたが、この条文の挿入によっても、なお本法案の持つこうした欠陥は何ら取り除かれないのであります。
 審議を通じて、プライバシー権を権利として確立し、保障することを土台とした、民間、自治体を網羅する包括的な個人情報保護法の制定が、本法案施行の前提であることが共通の認識となりました。
 ところが、修正案の所要の措置の内容について、その責任を負うべき政府の答弁は、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えるというもので、一体どういう内容の法律をつくるのか、あるいは包括的な個人情報保護法を必ずつくるのかどうかさえ、あいまいな姿勢にとどまっているのであります。
 包括的な個人情報保護法の制定に全力を尽くす、そしてその制定を待って本法案の審議を尽くすというのが、国民が納得する筋道ではありませんか。本法案を性急に押し通す必要は全くないのであります。いわんや、今述べた欠陥をこのまま残して本法案を通過させるわけには断じていかないということを申し上げておきます。(拍手)
 第二は、史上初めて全国民に共通番号がつけられることに対しての国民合意がないことであります。
 参考人質疑の中でも、広く国民の間でも、生まれてから死ぬまで番号がつけられ、その番号によって管理される社会へと一歩踏み出すことへの大きな不安が寄せられています。ドイツでも、一九八五年の憲法裁判所で、個人を全人格的に管理することにつながる住民基本台帳番号制度は憲法が保障する人格権を侵害するとの判決まで下っているのであります。
 日本弁護士連合会からも、国家からの自由を含めて、私生活全般、生活全般について把握をされるというような事態は憲法が想定していない状況だ、こういう意見も出されています。共通番号を導入することへの国民的な合意は全くないと言わなければなりません。
 その上、審議を通じて、住民票コードをマスターキーにして、利用範囲を拡大していく政府の意図も明らかとなりました。自治省と厚生省との間では、住民票コードと基礎年金番号の二つの番号制度の導入をめぐって、それぞれの利用範囲を定めた覚書を結び、将来、コードを年金業務に拡大するということが明らかにされています。また、将来的には納税者番号制度の基盤となり得ることもはっきりしてまいりました。
 国民総背番号制につながる危険な道を進むのかどうか、共通番号制度の導入が憲法に抵触しないのかどうか、広く国民的な討議にかけ、慎重な検討がなお必要であります。
 第三は、この制度が、政府の言うような地方自治体が主体の分権型システムではなく、中央集権型、情報一元化を意図したものだということであります。
 法案は、自治大臣が認可した全国一カ所の指定情報処理機関から国の行政機関に住民票コードと四情報を提供できるとしています。その方法の一つは、オンライン接続が予定され、ネットワークシステムの専用回線が使われることが明らかになりました。これは、このネットワークシステムの中に国の行政機関が完全に組み込まれていることを意味しています。市町村長がつけた個々人の住民票コードと四情報が都道府県センターを介して指定情報処理機関に集められ、その情報が国の行政機関に送信されるという仕組みは、分権型どころか一元化、集権型と言わざるを得ません。
 また、各地方自治体が、個人情報は守るべきだという大きな流れの中で、個人情報保護条例を制定しています。その数は今や一千四百七団体を超え、年々、百団体程度増加しているのであります。この中には、オンラインを全面的に禁止する条項を持っている自治体が五百六十五団体も生まれています。これらの条例は、この法案の成立によって廃棄されることになり、地方自治体が営々と築いてきた個人情報保護措置が水泡に帰すことになるのであります。この面でも分権型システムとはほど遠いものとなっていると言わざるを得ないのであります。
 以上、申し述べてきた本法案が持つ問題点は、わずかの利便性の向上ということだけで、看過するわけにはいかない日本社会全体にかかわる大問題であります。拙速な採決を避け、慎重な上にも慎重な検討がなお必要であります。このことを厳しく申し上げまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
議長(伊藤宗一郎君) 知久馬二三子君。
    〔知久馬二三子君登壇〕
知久馬二三子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案並びに自由民主党、公明党・改革クラブ、自由党の共同修正案につきまして、反対の討論を行います。(拍手)
 本改正案の目指す住民基本台帳ネットワークシステムの導入は、国民のプライバシーの保護及び住民基本台帳制度の基本にかかわる制度改正であり、将来の国民の権利義務にかかわる重大な影響をもたらす法改正であります。
 そこで、社会民主党は、与党当時、自治省と数次にわたる折衝を行ってまいりました。我が党の提起した問題点、疑問点の指摘を踏まえ、コード変更の自由化や守秘義務、罰則の強化等の一定の修正、改善が図られてきたことは評価することができると考えます。
 しかし、なお、重要な疑問が残ります。法案の提出は了承するが、法案自体に対する賛否は保留することとしつつ、ネットワークシステムに対する国民の幅広い議論、社会的理解と合意、国会における十分かつ慎重な審議の必要性を訴え、同時に、法案施行時点での包括的個人情報保護法の実現を提案してきたところであります。

 今国会から実質審議が始まりましたが、まず第一に、現時点に至っても、ネットワークシステムの将来の姿も明確であるとは言えませんし、プライバシー保護法も論議が進んでおりません。
 第二に、市町村と住民のものである住民基本台帳制度にコード化、ネットワーク化を無理やり押し込むことによる住民基本台帳自体の変質であります。
 第三に、EU個人データ保護指令に照らしても不十分なプライバシー保護、強権的権力行政機関に情報提供の道が残されること、他の個別法令によるコードの開示に対する歯どめがないこと、際限のない行政機関による内部データベース作成が防げないことなどのデータマッチングやデータベース作成の禁止の保障の不十分性、住民票コードの変更の記録の取り扱いの問題など、プライバシー保護の不十分性であります。
 第四に、オンライン禁止条例を上から解除するなどの地方自治権への侵害、役所の現場で発生するであろうさまざまな問題についての対応が不明確であること等、多くの重大な問題が残されていることであります。
 第五に、省庁再編に伴い、自治省ではなく、総理の支援・補佐機能を持つとされる巨大な国家管理行政機関である総務省が所管することになりますが、これは住民基本台帳ネットワークシステムの性格の重大な変更であり、本法案の提出の前提自体が崩れ去ったと重く受けとめなければならないと考えるものでございます。
 社会民主党は、一、全国民的番号付与の市民的、社会的利益との比較考量、二、国民の理解度、三、市民の選択権、自己情報開示請求権等の保障、四、強権的権力行政との遮断、五、プライバシー保護の強化と包括的個人情報保護法の実現、六、自治省の対応状況の評価等の六点を本法案の態度を決するに当たっての基準として臨んできましたが、いずれもが不十分であると言わざるを得ません。
 個人情報の保護に万全を期するための所要の措置を講ずるものとするという自民、自由、公明三党の修正案についても、所要の措置やシステムの内容があいまいであり、さらに包括的個人情報保護法自体の内容の担保もないなど、歯どめ措置として満足できる内容となっておりません。部分的な修正で本改正案の本質的な問題が直ちに解決するとは考えられないことから、社会民主党は本改正案及び修正案に反対することを明らかにして、私の討論を終わります。(拍手)
議長(伊藤宗一郎君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行います。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。
 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
議長(伊藤宗一郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。
 投票を計算させます。
    〔参事投票を計算〕
議長(伊藤宗一郎君) 投票の結果を事務総長から報告させます。
    〔事務総長報告〕
 投票総数 四百七十八
  可とする者(白票)      三百四十八
    〔拍手〕
  否とする者(青票)        百三十
    〔拍手〕
議長(伊藤宗一郎君) 右の結果、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――

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