1997年10月31日 黒田 充
広報紙に掲載された予算記事、すなわち財政情報は、これまで述べてきたように自治体間でその内容に大きな格差が生じている。特に、今回検討した大阪府下44自治体の広報紙の内、過半数を超える25自治体の広報誌がC評価となったのは、財政情報公開における広報紙の位置づけの問題だけでなく、財政情報の公開の必要性そのものへの行政側の認識の不充分さの表われだといえる。こうした掲載実態からは、住民自治を進めるために「住民に自治体の財政状況を知ってもらおう、知らせていこう」という行政の積極的な姿勢は全く見えてこない。
では、このような格差が生じた原因はどこにあるのか。これを検討するために、広報紙の評価と自治体の財政規模や、広報紙全体の情報量などの間に何らかの関係があるのか検討してみることにする。
自治体の規模と事務執行能力は一般に比例するものとされ、地方分権推進委員会第2次勧告の中でも市町村の行政能力向上に向けた自治体の合併推進が述べられている。では、財政情報を住民にわかりやすく知らせるという事務執行能力についても、自治体の規模が大きいほど豊かだといえるのであろうか。この点を確かめるため自治体の規模を示す当初予算額と、広報紙における予算記事の評価との関連を見たのが右記のグラフ(図8)である。
このグラフからわかるように、当初予算額と広報紙への評価の間に、明確な関連は見られない。財政情報を住民にわかりやすく知らせるという事務執行能力は、自治体の規模が大きいほど増大するとはいえないのである。むしろ、財政規模のトップ3である大阪市、堺市、東大阪市の広報紙は、印刷経費のかかるカラー印刷で美しい紙面となってはいるが、その内容においては全てCランクである。このことは自治体の規模が大きくなることが、地方自治、特に住民自治にとって必ずしも良い結果を生むものではないことを示しているのではないだろうか。
さて、予算記事の評価が低くなる要因の一つは記事の量、すなわち掲載ページ数が少ないことである。予算掲載記事の面積をA4サイズに換算(ページ数をタブロイドは2倍、B5サイズは0.7倍する)した場合、A評価の広報誌が平均8.3ページであるのに対し、B評価は平均3.2ページ、C評価は平均2.4ページに過ぎない。であるなら「広報紙のページ数が少ないために、予算に関する記事を掲載するページ数が少なく、結果として内容の乏しい記事になっている」ということになるのだろうか。次にこの点について検討する。各自治体が1年間に発行する広報紙のページ数を同様にA4サイズに換算し、予算記事の評価との関連を見たのが次のグラフ(図9)である。
このグラフからわかるように、年間ページ数(広報紙の年間総情報量)が多いほど、予算記事の評価が高くなるとはいえず、この仮定は成立しない。すなわち、年間のページ数がどれだけあるかよりも、どれだけ予算記事にページ数を割くかが、問題である。
1997年5月末現在、大阪府下で情報公開条例を制定しているのは13市1町である。「情報公開制度を実施している自治体は、情報提供についても先進的であり、予算記事の評価も高い」とはたしていえるのだろうか。情報公開条例制定市の広報紙を評価別に分類するとA評価が吹田市、河内長野市の2紙、B評価が豊中市、八尾市、寝屋川市の3紙、C評価が大阪市、堺市、高槻市、茨木市、大東市、箕面市、池田市、摂津市、島本町の9紙となっている。A評価を受けた2市はどちらも情報公開を制度化しているが、一方、C評価も制度化自治体14の内9自治体と多く、必ずしも情報公開と予算記事の評価とに関連があるとはいえない。
以上のように、自治体の規模、広報紙の総情報量、情報公開条例の制定の有無と、予算記事への評価とは何ら関係がないことがわかった。各自治体の広報紙の評価に大きな差が生じた原因はもっと別なところにあるようである。すなわち、広報紙そのものの編集体制と編集技能、広報担当職員・財政担当職員の財政情報の公開に対する意識、どちらが記事を作るのかといった財政担当課と広報担当課の関係、さらには首長以下の行政そのものの住民自治に対する方向性・政治的傾向などが総合的に働いているのではないだろうか。こうした要因については、今後、行政に対するヒヤリング調査などを行い具体的に明らかにしていく必要がある。