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 大阪府下市町村の情報公開の到達点と課題

月刊誌『おおさかの住民と自治』1999年8月号 通巻248号
1999/8/15  黒田 充

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情報公開法の成立

 昨年3月に国会提出された後、与野党の修正協議が難航し3国会で継続審議となっていた情報公開法が、5月7日にようやく成立しました。日本も、やっと「開かれた政府」に向けて一歩を踏み出したと言えます。しかし、いくつか問題点もあるようです。例えば日本弁護士連合会は、法が成立したことを国民とともに喜びたいとしつつ「従来より求めてきた『知る権利』を法文上に明記すること、非公開事由を限定・明確化すること、原告住所地を裁判管轄とすることなどが入れられず、必ずしも十全なものとはいえない」と指摘しています。よし請求してやろうと意気込んでいる方も多いかと思いますが、あいにく同法が施行されるのは2001年4月と見込まれ、実際に国民が権利を行使できるのは、まだ先のようです。

大阪府の条例制定の到達点

 ところで、みなさんもご存知のように情報公開の分野では自治体が先行してきました。山形県金山町が全国に先駆けて情報公開条例を制定したのは、1982年3月と今から17年も昔です。その後の制定数の伸びは、あまりよくありませんでしたが、ここ数年は情報公開への国民的関心の広がりを受けて、着実に増えています。自治省の調査では、昨年4月現在で要綱も含め全国580の自治体(17.6%)が制定済みとなっています。また、大阪府下では府も含め20自治体が制定済みと一応全国平均を上回っています。が、市レベルで見れば51.5%やっと半数を超えたに過ぎず、全国平均が47.8%ですから、けっして誉められた状況ではありません。

「開示請求」に頼らない情報公開を

 さて、本稿に与えられたテーマは「府下市町村の情報公開の到達点と課題」です。しかしながら、筆者は法律の専門家でもありませんし、情報公開を求める運動家でもありません。府下の個々の条例を比較し、問題点を検討することや、実際に開示請求をして明らかになった問題点などは、それぞれの専門家の方にお任せしたいと思います。では筆者が、本稿で述べたいのは何かと言えば、それは広い意味での情報公開制度が大阪ではどのようになっているのかという点です。情報公開条例は情報公開制度の根幹を成しますが、情報公開制度の全てではありません。情報公開条例は、これまで、住民が行政当局に対して特定の情報についてその公開を請求する「開示請求制度」を中心に制度化されてきました。情報公開法も同様です。しかしながら、行政の所有する全ての情報の公開を開示請求制度だけに頼らなければならないとすれば、行政情報を得るための住民の労力、時間、金銭の負担は莫大なものとなります。これでは決して情報公開が進んだとは言えないでしょう。また、対応する行政当局にも相当な人的資源や財源が必要になり、効率的とは言えません。そこで、筆者は、むしろ行政に係る基本的な情報、例えば財政や例規、行政計画などの情報は、住民から個々に開示請求を受けるまでもなく、気軽に閲覧・取得できる形態での公開を原則とすべきではないかと考えています。広報紙や行政資料センター、図書館の行政情報コーナー、インターネットホームページなどの充実、すなわち総合的な情報公開・提供の施策の充実です。ただし、注意しなければならないのは、これまでのように、どの情報をどこまで住民に公開するのかを行政に任せっきりにしてはならないという点です。提供された情報の真偽を開示請求制度などを使ってチェックするとともに、具体的に情報を特定した形での公開・提供の義務づけをすすめることも必要でしょう。
 ところで、先日、公表された東京都が昨年10月に行なった広報活動に関する実態調査によりますと、「広報活動を通じて今後知らせて欲しい都政情報は」の設問に対し「都予算の具体的内容(21.3%)」が、「都の施設の紹介(27.2%)」に次いで二番目となっています。地方財政危機が深刻化する中で、東京都だけでなく全国的に住民の自治体財政への関心が高まっていると見て良いでしょう。これまで筆者は、この様に関心が高まってきた財政情報の公開状況について、大阪府下の自治体の広報紙、図書館、ホームページを対象に調査をしてきました。本稿では、以下その結果の概略を述べることにより、大阪における広い意味での情報公開の実態を明らかにしたいと思います。

府下の実態 ― 広報紙・図書館・ホームページ

 まず、広報紙です。調査結果は研究所既刊の「大阪地方財政読本97」で詳細に報告済みですが、再録すると、予算記事の掲載状況を住民自治に役立つかという点からABCの三ランクで評価したところ、A評価は、吹田・河内長野の二市のみで、過半数の広報紙がC評価となっています。ここからは、住民自治を進めるために「住民に自治体の財政状況を知ってもらおう、知らせていこう」という行政の積極的な姿勢は全く見えません。  図書館はどうでしょうか。昨年末に大阪府立と大阪市立の図書館に、どのような財政情報が置かれているのか調べてみました。すると大阪府政情報センターや大阪市行政資料センターに比べ両図書館とも置かれている資料が極めて少なく、系統的・網羅的な収集が行なわれていないことがわかりました。例えば府立図書館には決算書も予算書もなく、市立図書館には決算書は93年度分までは欠けている年度もあるものの一応置かれてはいますが、予算書は全くありません。この二つの図書館だけを見れば、図書館の行政資料収集(図書館法で公立図書館の業務の一つとされています)は、この程度のものかと思ってしまいます。しかし、雑誌「みんなの図書館」編集部が1994年に全国の市区町村立図書館から56館を抽出し行なったアンケート調査によれば、予算書は98%の、また決算書は90%の図書館が収集しており、大阪府立、大阪市立図書館のケースは、全国的に見れば、むしろ少数派のようです。今後、こうした傾向が大阪府下全体のものであるのかを明らかにするために、大阪府下各市町村立図書館に対する実態調査が必要でしょう。因みに私の住んでいる松原市の図書館には、決算書はありますが、予算書は置かれていません。あなたのまちではどうでしょうか。
 さて、最近急速に開設が進んでいる自治体のホームページではどうでしょう。(財)地方自治情報センターなどがインターネットで提供している「全国自治体マップ検索」に登録している自治体は、一部事務組合も含め1175(5月17日現在)団体に達しています。また先ほど紹介した東京都の実態調査によると、インターネットを利用できる機器を保有している人は10.1%で、このうち『東京都ホームページ』を“利用している”人は18.7%となっており、自治体ホームページへの関心は高まっているようです。ところで大阪では、筆者が調べたところ府を含む23自治体が現時点で開設しているようですが、こうしたホームページでは、財政情報をどのように伝えているのでしょうか。昨年の11月末に、各ホームページへアクセスし予算、決算、財政状況の掲載の有無と掲載ページへ到達する経路、掲載内容等について調査しました。調査により明らかとなった問題点の第一は、調査時点で開設していた20の自治体の内、財政情報を全く載せていない自治体が、12と過半数を超え、3項目とも掲載していたのは池田と大東のみと、情報公開・提供とは、ほど遠い状況にあるという点です。第二は、財政情報がどのページに掲載されているか容易にわからない点です。市の概要の一部として、広報紙のバックナンバーとして、統計の一部として、まちづくりの情報として、また行政情報の一部としてなど、自治体によってその所在は様々であり、これらのページを発見するまでに、相当数のページを開く必要があります。第三に、大阪・池田・八尾市は広報紙に掲載されたものより多少詳しい情報を掲載していますが、他は広報紙と同程度かそれ以下と貧弱な点です。広報紙で載せきれないより詳しい情報をインターネットで公開するというような状況とはなっていません。掲載していないところはもちろんですが、掲載しているところであっても、なぜインターネットで情報を公開するのかという点が、行政に理解されていないようです。そして第四には、ホームページの情報では満足できない場合に、どうすれば良いのか案内がない点です。「より詳しい資料は市政情報センターで」とか「財政課へどうぞ」とか、「情報の開示を請求してください」といった案内は見当たりません。
 以上の調査結果を見る限り、大阪の自治体の広い意味での情報公開は、住民自治を保障しうるものとは程遠いようです。

日野市の市政図書室

 ところで、本稿の最初に情報公開条例を比較し検討することは、筆者の手にあまると書きましたが、普通の住民がとりあえず各市の条例を集めようとすれば、どうすれば良いのでしょう。自分の住んでいるまちの条例は、市役所の情報コーナーか図書館で、例規集を繰れば見ることができますが、他市の条例はどうでしょう。府立図書館には府下各市の例規集が置かれています。しかし、残念ながら全市町村ではありません。自治体の職員や議員であれば、職員図書室や議員図書室で、府下全市町村の例規集を見ることは可能でしょう。しかし、住民はこれらの部屋に入り、例規集を閲覧できるのでしょうか。東京の日野市では、市政図書室という名の図書館が市役所内にあり、職員図書室や議員図書室を兼ねています。ここには日野市の例規集だけでなく近隣各市のものも置かれ、住民が自由に利用できるようになっています。予算書や決算書など様々な行政資料も同様です。あなたのまちの図書館には、どんな行政資料が置かれているかご存知でしょうか。
 情報公開条例の制定運動や開示請求運動は、住民自治を内実のあるものにする上で、たいへん重要です。しかし、真の意味で住民が自治体の主人公となるためには、開示請求があるまで情報を公開しないような自治体ではなく、開示請求がなくてもどんどん情報を公開する自治体をつくることではないでしょうか。そのためには、こうした運動だけでなく、あなたの住んでいるまち、働いているまちで、広報紙や行政資料センター、図書館、ホームページなどが、どのような行政情報を提供しているのか具体的に調べる運動、不充分であるならこれを改善させていくような運動を進めることが必要ではないでしょうか。
 なお、本稿で紹介しました調査の詳細や関連情報について、筆者のホームページで公開していますので、興味のある方は、そちらもご覧ください。

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