多くの自治体ホームページには、フロントページなどに、役所(担当課)の電子メールアドレスが掲載されています。また、メールを役所を送るためのページ(フォームが用意されていることも多い)が特別に作られているところも増えています。こういう所には、多くの場合「ホームページに対するご意見をどうぞ」とか「市政に関するご意見・ご要望をお寄せください」などと書かれています。
しかし、これだけを見て「住民の声を聞く開かれた役所なんだ」と思うと大きな勘違いです。先程の文面の横に、「原則として回答はいたしかねます」「お寄せいただいたご意見などについて、個別の回答はいたしかねますが、今後のホームページづくりへの参考にさせていただきます」「当分の間ご質問等への回答は控えさせていただきますので、あらかじめご了承ください」などと書かれているところが、結構存在します。これは、「メールを送ってください。でも応えませんよ」という一方通行の宣言です。
例 ――――――――――――――
・ 東京都福生市
●このホームページについてのご意見・ご感想をお待ちしております ●なお、当分の間ご質問等への回答は控えさせていただきますので、予めご了承ください。
・ 東京都北区
区政に関するご意見・ご要望をお寄せください 〇お寄せいただいたご意見・ご要望は区政の参考にさせていただきます。個別には回答はいたしませんので、あらかじめご了承ください。 〇お寄せいただいたご意見・ご要望は広報課で整理した上、このコーナーで要旨を公表させていたたくことがあります。 〇お寄せいただいたご意見・ご要望の分析のため、年齢、性別、お住いの記入にご協力下さい。・・・・・・・・「回答しない」くせに、メールアドレスの記入欄を設けている !!
・ 大阪府大東市
このホームページに関するご感想は [email protected] までお寄せ下さい。なお、個別の返答はいたしかねますのでご了承下さい。
・ 大阪府岬町
このホームページをご覧になった、ご意見ご感想をお聞かせください。 なお、個別の回答はいたしかねますが、今後のホームページづくりの参考にさせていただきます。・・・・・・・・ここも「回答しない」くせに、メールアドレスの記入欄を設けている !!
インターネットの持つ最大の特徴の一つは、電子メールのやり取りに端的に現れる双方向性です。発信者から受信者に一方的に情報を伝えるのではなく、受信者から発信者に対して、簡単に返信ができるというすばらしい特徴を持っています。この情報のやりとりは、一回きりではなく、卓球のラリーのように何度も繰り返すことが当然できます。「回答はしない」としている自治体は、こうしたインターネットの本質を理解していないと言わざるをえないでしょう。
「インターネットで意見を送ってくるのは必ずしも住民とは限らない」、「匿名でメールを送ってくるものもあり一々答えていられない」、「これまでの文書収受の範囲から逸脱しており受け付けることができない」など行政側の言い分もあるかとは思います。しかし、電話でなら、相手が誰であろうと、もちろん匿名であっても、言っていることがどんなに無茶苦茶なものであっても、一応やりとりはするはずです。でも電子メールなら聞いておくだけで答えないでは、住民は納得できないでしょう。
もちろん、全ての自治体がこうした一方的な態度をとっているわけではありません。送られて来た電子メールの処理方法について、大阪府堺市や東京都千代田区のように、きちっと書いている自治体も増えてきています。実際に私からのメールに対し、ご丁寧な回答を送っていただいた自治体もいくつかあります。また、個別には回答はしない点では誉められませんが、送られてきたメールへの回答をホームページで公開し、多少なりとも双方向性を考えようとしている大阪府守口市のような変則的なところもあります。
もっとも、中には、三重県鈴鹿市のように、電子メールでの回答はできないが、文書による回答を行なうとしている自治体も見られます。これは、メールによる文書送達が、公文書の送達として役所内部で位置付けられていない(公印の問題もあるでしょう)ことによる恐らく過渡的な措置でしょう。回答しようという姿勢さえあれば、電子メールによる回答も、そう遠くない時期に実現しうるでしょう。
インターネットを住民自治の点からどう生かしていくのか、活用していくのかなど、ホームページの開設目的を明確に持っているのかどうかが、こうした住民からのメールに対する対応の差になって現れているのではないでしょうか。
双方向性を生かすという点では、電子メールだけでなく、ホームページ上に設置した掲示板を使って、住民と行政、また住民と住民の間でオープンに意見を交わしていこうというところも現れてきています。例えば、神奈川県藤沢市は、ホームページに「市民電子会議室」を設け、「ネットワーク上のコミュニティづくりをめざし、身近な生活の話題から、地球環境に関することまで、さまざまな意見や情報の交換が行われています。会議室には、藤沢市民に限らず、どなたでもご参加いただけ」るとしています。特に、「開かれた市政実現の一方策として、市政への新しい市民参加の場として開設してい」るという「市役所エリア会議室」では、市政に係わる様々なテーマに関して意見交換がなされ、市の職員も参加者の一員として行政の持っている情報を発言しています。この「市役所エリア会議室」の説明文には、「意見交換がされ、ある程度まとまったものについては、『運営委員会』が『市政への提案』として市へ提出」し、「市民自治推進課が窓口となり責任のある対応を」するとも書かれています。
もっとも、インターネット利用者の属性は、まだ今のところ、かなり偏っているようです。日本インターネット協会編「インターネット白書2000」によれば、インターネット利用者の72.1%を男性が占め、年齢別では20・30代に全体の45.6%が集中しています。したがって、インターネットを通じて出された意見が、必ずしも市民の意見全体を反映しているとは言えません。しかしながら、インターネットを単なる広報媒体ではなく、民主主義、住民自治の実現の道具として位置づけていこうという積極的な試みは、大いに歓迎すべきでしょう。
また、奈良県橿原市は、全国の自治体に先駆けて、情報公開条例に基づく開示請求を電子メールで受付け、希望すれば電子メールで公開文書を返信するサービスを1999年11月1日から開始しました。これも、インターネットの持つ双方向性を生かしたものです。
一方、政府も、規制の設定、改廃に当たり、広く国民等の意見・情報を考慮し、また、行政の説明責任を重視していくことを目的として、意見の提出を電子メールでも受付ける「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント)」を1999年4月1日から開始しています。募集期間が極端に短い場合があったり、まだまだ国民に周知されていないなど、多くの問題を抱えてはいますが、まず始めることが大事ではないでしょうか。